夏野菜がすべて畑から姿を消す頃に掘り起こすのがジャガイモ。
実は、その味わいや育て方は、品種によってさまざまなのです。

ジャガイモが支える英国とアイルランドの暮らし

10月も半ばを過ぎ、いよいよ秋が深まってきました。
ピーマンやナスなどの夏野菜は最後の力を一絞りするかのように、小さな実をぽつんぽつんと付けています。

この季節に掘り起こすのがジャガイモです。
家庭菜園を始めた当初は、どの店でもえらく安く売っている野菜をわざわざ育てる意味あるのかしら、くらいに思っていたのですが、そんな疑念は最初の収穫時に霧散しました。
タマネギもそうなのですが、不思議なことにベーシックな野菜ほど、自家栽培の味の濃さが際立つのです。

ジャガイモといえば、英国人、さらにアイルランド人の主食。
日本人にとってのお米のような存在です。
アロットメントでは、その人がなにを植えているのかで、どこの出身なのかがわかることがありますが、ジャガイモを一面に植えているのはアイルランド人と思ってほぼ間違いありません。

掘り起こしたあとは土を軽くはらって、しっかりと表面を乾かし、そして紙袋や麻袋、段ボールなどに入れて、暗所で保存すれば、長期間にわたって美味しく食べることができるのも、ジャガイモが主食となりえる理由でしょう。

自家栽培ならではのバラエティ

これほどポピュラーな野菜であるにもかかわらず、なぜかスーパーで扱っている品種は、多くて4〜5種類程度。
マッシュポテトに適したデンプン質の多いほくほく系と、茹でても崩れない水分の多いねっとり系に分かれます。

一方、自家栽培用の種芋の種類は、40種類以上ともいわれていて、小さな園芸店でも、10種類以上置いているのが常です。
以前、王室園芸協会でも年に一度「ポテト・フェア」なるジャガイモのイベントがあり、何十種類ものジャガイモの展示や種芋の販売、そして試食会までが催されていて、圧倒されました。

ジャガイモは品種によって、初春に植え付けて12週間後に収穫できる「ファースト・アーリー」、4月〜5月に植え付けて夏に収穫できる「アーリー・セカンド」、春温かくなってから植え付けて秋に収穫する「メインクロップ」の3つのタイプに分かれます。

我が家では、長期保存に最も適しているとされるメインクロップの品種から、2〜3種類を選んで毎年植え付けています。
今年入れたのは、赤い皮にクリーミーな味わいのデジレーと、黄色の皮にしっとりとした質感のカメオ、そして畑のお隣さんからいただいた品種不明な種芋の3種類を入れました。

最近のお気に入りは、これらのジャガイモでスマッシュ・ポテトを作ること。
ここ最近流行のスマッシュ・ポテトは、皮付きのまま茹でた小ぶりのジャガイモを1センチ程度の厚さに潰して、塩、ローズマリーを散らし、オリーブオイルをたっぷりとかけて、オーブンでベイクするというものです。
カリカリになった皮の香ばしさと、ジャガイモの食感のコントラストが病みつきになります。

そして、北海道ではお馴染みのイモ団子と、カボチャ団子も定番のひとつ。
こちらは多めに作って冷凍しておけば、小腹がすいたときのおやつに最適です。

畑の風景が冬へと向かっていくなか、こうして、食生活も秋から冬へと移行していくのです。