イギリス人の夫、息子と一緒に英国と日本を行ったり来たり。編集・ライターとして欧州の緑豊かな生活と日常をいろいろ発信している。
運河の街、アムステルダムに隣接するアムステルフェーンは、大きな公園や湖が点在する、緑豊かな市。
都会的なアムステルダムから自転車でもアクセス可能とは思えないほど、街には緑があふれ、人々の暮らしに潤いを与えてくれています。
今回は、そんなオランダ、アムステルフェーンにある公園と植物園の話題です。
アムステルフェーンのボタニカルな公園
大きな公園や湖が多く点在するアムステルフェーンは、自然豊かな市として国内外で知られています。
スキポール空港からも近く、アムステルダムからはバスや自転車でも行けるとあって、旅の疲れを癒すために、日帰りピクニックをする旅行客もいるとか。
そんなアムステルフェーンの公園の中でも、一番ポピュラーなのが「アムステルダムセ・ボス(Amsterdamse Bos)」。
オランダ語で「森(bos)」という言葉が名前につくだけあって、園内は公園というよりは大きな森のよう。
人々は散歩やジョギング、サイクリングはもちろん、ボート漕ぎやイベントなど、それぞれの楽しみ方で時間を過ごします。
そのアムステルダムセ・ボスの横に、「Dr. Jac. P. Thijsse Park」「De Braak」「Dr. Koos Landwehr Park」という3つの植物園がひっそりと佇んでいます。
いつも手入れが行き届きいたこの植物園では、時間がゆっくりと流れ、訪れた人を静寂が包み込んでくれます。
園内に植栽された木々や植物たちは、さまざまな種類が共存しながらも、とても自然な雰囲気。
季節ごとに変化する光と影の中で表情を変える姿は、まるで大自然のミュージアムのようです。
とくに春は、長い冬の終わりをつげる花々が咲き乱れ、園はいっそう鮮やかな彩りで輝きます。
感動的な姿に隠された努力
じつは、ここはかつて泥灰湿地だったところ。
1940年以来、酸性が強く痩せた土地に、ほかの土地から土を運び込むことなく、本来の土壌を生かしながら、オランダに自生する植物や木を中心に植え育て造園してきたそうで、その過程にはなみなみならぬ努力があったとか。
何度も失敗を繰り返しながら、現在の姿になったというわけです。
そしてここには、「ムシトリスミレ」やピンクの花をつける「マーシュセントジョンズワート」のような、オランダ国内では絶滅したり、希少となってしまった植物の姿を見ることもできます。
泥炭地帯では生育しないとされる草木であっても、ここではいきいきと存在しているのです。
「野趣に富み、かつ統一感のある植物園を作り出すには、人の手入れと努力、そして情熱が必要」とは、植物園を守る庭師の方。
今でも除草はすべて手で行い、枝の剪定や草刈りも独自の方法で行っているそうで、とくに街に野生の緑を増やすときは、周辺の環境や土壌をよく理解し、植物や木が健康に育つよう、念入りに研究するのがカギとのこと。
環境に適した草木の配置、長いスパンで描く木々のプランニング、緑が人々にとってどんな価値があるのかを想像することがとても大切だと考えているようです。
庭師の方々の、目に見えない努力が伝わってきますね。
愛情込めて育てられる小さな緑たち
De Baakの北側の片隅には「Heemplant nursery De Braak」という、ナーサリーがあります。
ここは、庭師の方々が日々、熱心に小さな緑を育てるところ。
在来種の植物を種から発芽させたり、挿し木で木を育てたり。
「バーチ」「ハンノキ」「ブラックポプラ」などの樹木は、長い年月をかけて育て上げ、美しく成長したころに、植物園はもちろん自治体内のほかの場所に植え替えるのだそうです。
ハーブ園の向かいに並ぶ、たくさんの丸いボウルのような鉢。
これは1972年にアムステルダムで開催された緑の祭典「フロリアード・エキスポ」で使用されたもので、現在は酸性泥炭や栄養不足な砂、石灰質ロームなど、さまざまな土壌を使うことにくわえ、鉢のいろいろな高さに排水用の穴をあけることで、植物が好むビオトープを作っているのだとか。
このビオトープはバルコニーや小さな庭にもぴったりで、マンションライフが主流の東京でも活躍しそうですね。
地球温暖化が進む今、都市の緑化が大きな課題となっています。
緑を増やすことは街の雰囲気にも影響を与えてくれるもの。
アムステルフェーンの公園や植物園で培われてきたことから、日本の都市緑化に必要なヒントを学びとることができそうです。
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